旅する現場ブログ

なぜ中東からのインバウンドなのか?(その1)

 中東のお客様をメインにインバウンド(訪日外国人旅行)の仕事をしている株式会社ジェイ・リンクスの代表取締役 金馬あゆみです

「どうして中東を中心にインバウンドをされているんですか?」とよく聞かれます。

最近は富裕層(高付加価値旅行者)狙いで取り組むようになったところも増えたようですが、実は理由はそれとは全く関係のないものでした。

「どうしてか分からない」というのが正直な答えなのですが、それでは納得してもらえないと思うので、今回は中東からのインバウンドに取り組むことになったきっかけについて書いてみようと思います。

  1. 突然の訪問者

ある日のこと、神戸ムスリムモスク(イスラム教徒の礼拝所)の理事が、共通の友人に紹介されたとのことで弊社に来られました。

そして話されたのは、ムスリム(イスラム教徒)の訪日旅行者の現状。

宗教の戒律により豚など口にできないものがある彼らは、モスクで日本に住んでいる同胞たちに、食べられる料理があるお店(特にその地域の名物料理)や買っても大丈夫なお土産、街なかで礼拝ができる場所を相談しているというのです。

そこで、インバウンド(訪日外国人旅行)の仕事をしている私たちに何とかしてほしいと頼まれる訳ですが…。

ちなみに、この「共通の友人」が誰なのかは未だに分かりません^^;

  1. 葛藤

確かに、折角の旅行で旅の醍醐味が味わえないのは大変だな、かわいそうだなという気持ちは生まれましたが、かといって私たちにはイスラム教やムスリムに関する知識はほとんどなく、ニュースなどで見るネガティブな情報による恐怖心や、何か対応を間違えればトラブルになるのではないかという不安がありました。

更に、私自身が宗教がらみで色々あった家庭で育ったこともあり(今は全く問題ありませんが)、できれば宗教関連の話からは離れていたいという気持ちもありました。

  1. ターニングポイント(ラーメンとおっちゃんの涙)

そんなこんなで会社として特に何かをする訳ではなく、理事とはご家族も含めて時々お会いしてお話ししたり、モスクでのイフタール(ラマダン(断食月)の日没後の食事)に誘っていただいたりしながら、私の中の誤解や偏見は少しずつ解けていきました。

そしてある日、理事からご自身の夢を聞かされます。

「死ぬまでに一度でいいから、日本のラーメンを食べたい」

日本在住歴約20年。

その間、いつかいつかと思いながら、豚が入っていたり、他の材料に何が入っているか分からずだったりで、食べることができずにいたそうです。

そこで、くれおーるの加西社長にムスリムが口にできない食材を除いたラーメンをお願いしたところ、快く鶏と醤油のラーメンを作ってくださった上に、他にも豪華な料理を準備してくださったのです。

目の前にやっと「食べられるラーメン」が出てきて、感動のあまり固まる理事。(麺伸びるで)

そして、スープを飲み、麺を食べ、流れる嬉し涙。

「夢が叶いましたよ。これを家族にも、友達にも食べさせてあげたい…!」

この姿を見たことがターニングポイントになりました。

  1. 最初の一歩

20年も食べられずにいたものが、きちんとコミュニケーションを取ればちゃんとできるということを目の当たりにし、このことを知ってもらいたいと、まずは手弁当で勉強会を開くことからスタート。

そして、それまでは欧米のお客様がメインだったインバウンド事業でも、少しずつイスラム圏からの受け入れを始めます。

その中でも、どんな所なのか、どんな人たちなのかよく分からず、最後の最後まで手を付けずに残っていた中東。

色々と調べても実際のところが見えてこず、それなら一度現地に行こうと出展したのが、アラブ首長国連邦・ドバイで開催される中東最大の国際旅行博「アラビアントラベルマーケット」だったのです。

今でこそコラムを書かせていただいたり、こんな話をさせていただくようになりましたが、「なぜ中東からのインバウンドなのか?」の最初の理由は、日本の富裕層誘致や観光消費に貢献したいという高尚なものではなく、不思議な出会いと、人とのご縁だったのです。

(その2に続く)

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